今日はロンドンで食べられるお魚について、ちょっと書いてみようと思います。
松江出身で日本海沿岸の新鮮なお魚を食べて育った私、初めてロンドンに来た1990年当時のお魚事情はちょっとショックでした。日本と同じく島国のはずなのに、魚屋ではぐったりしたお魚が堂々と売られ、ロンドン一の高級デパートハロッズでさえお魚売り場には何とも言えない嫌な匂いが漂い、しばらくの間はとてもお魚が食べられませんでした。
思えば、日本食レストランは数えられるほどしかなく、「Sushi」という言葉を聞いただけで普通のイギリス人は警戒して眉をひそめる、そんな時代でしたっけ。
それからすると今はずいぶんと状況が進歩しましたね。
昨今の健康ブームに乗ってお魚を食べる人が増え、日本食はクールな(かっこいい)モダンキュイジーヌとして流行の波に乗った感があります。Waitrose やTescoに魚売り場が出現し、パックのお寿司が売られる日が来るなんて、かつては想像もしていませんでしたわ。
それでもまだまだ街中の魚屋やスーパーの魚売り場のスタンダードとお値段には満足できないことがよくあります。そんなときには頑張って早起きしてお魚市場へ出かけます。
こちらロンドン築地こと、ビリングスゲート・フィッシュ・マーケット(Billingsgate fish market)
中はこんな風。
威勢のいい掛け声と雑然とごったがえす場内。
↓こちらは海の幸のキングとクイーン、ロブスターと帆立貝。
ロブスターはカナダ、アメリカから空輸されるものと、イギリス、スコットランド、ノルウェーで採れるヨーロッパ産のものとに分けられます。育つのに時間がかかり、通常は6年、1㎏のものだと10年以上かかかるそう。お値段が高い理由のひとつはそんなところにもあるようです。
一方、帆立貝の産地はスコットランド。お料理はいろいろあるけれど、私の好きな食べ方は老酒とおしょうゆをたらしてコリアンダーとともにさっと蒸すモダンチャイニーズスタイル。そのものずばりで美味しい。
そして、あまりに有名、スコットランド産の鮭。
この日は一尾買って帰り、筒切りにして自家製の味噌漬けを作りました。
↓左の鯖は、北大西洋と北海に広く分布し、イギリスではタラ、サーモンと並んで一般的なお魚です。
新鮮なものを求めれば日本で食べるものと同じかそれ以上に美味しいもの。お値段も安定しています。この日もとてもきれいだったので、大喜びで買いもとめ、塩鯖や味噌煮にしました。
左手奥はアンコウ。白身でしこしことした大変美味しいお魚で、高級魚とされています。
実際お値段も高いのですが、背骨を切り取るだけで食べられるので、捨てるところが少ないし、海老と鶏肉の中間のような締まった身は弾力があって崩れにくく、いろいろなお料理に向きます。我が家での一番人気は唐揚げですが
たまにはガストロパブを気取ってモンクフィッシュ・カレー(アンコウの入った白身魚のカレー)はいかが。海老カレーよりずっと美味しいですよ!
おなじみの鯖も、ちょっと目先の変わった夏向きのお料理としては、小麦粉をはたいてからりと揚げ、サルサソースを添えてメキシコ風に頂くとさっぱりとして美味しい。
イギリスはフラットフィッシュと呼ばれる平たいお魚、いわゆるひらめやカレイの種類が豊富なことも特徴のひとつ。
その中でも最大級のカレイの仲間で、通常3-15kg、時には200㎏に達するものもあるのが下のハリバットというお魚です。
肉厚で、雪のような真っ白な身を持ち、こちらも高級魚のひとつとされています。溶かしバターを塗ってオーブンで焼いたり、グラタンやホイル焼きなどいろいろなお料理に使えますが、身がぱさつきがちなのでご注意。
オーブンでグリルする時にもバターか白ワインかフィッシュストックとともにどうぞ。
蟹も必ずお魚屋さんに売れているもののひとつ。
これはブラウンクラブという種類でイギリスではもっとも一般的な蟹です。イギリスの蟹の産地はノーフォークまたはデボン。
蟹の身と赤ピーマンで作るテリーヌ
右の蟹はブルークラブと呼ばれる種類。
銀色に光ってひときわ目をひくのは太刀魚。
いわしも新鮮でとてもきれいでした。
海老を売るおやじ
海老はあまり大きいと使いにくいし、かといって小さいとわざわざ魚市場で買う意味がないので、ぎりぎりエビフライにできるサイズを買い求めます。
いつもの海老フライも信じられないほどの美味しさ!
こちらは海老と野菜の中華風炒め。
スライスバゲットをトーストし、自家製タペナードを塗ってバジルの葉とボイルした海老を載せた前菜。
さて、お魚が新鮮で、種類が多く、お値段も安い。いいことばかりのようなお魚市場ですが、欠点もありますよ。
まず、ご覧のようにたいていは箱買いなので、量が調整できない。(なのでお友達と3-4人で行くのがベスト)
次に、私の住む北ロンドンからは遠いので、早朝でも車で30-40分かかります。
さらに、当然のことながら午前3時起き。
そして、帰ったら即刻お魚を自分でおろさなければならない!
それでも私はビリングスゲートが大好き。
お魚は見るのも食べるのも触るのも好きなので、お魚市場に行くとわくわくします。
イギリスで食べられるお魚とそのお料理について、これからもいろいろ勉強していきたいです。